アルプス以北で開催された最初の公会議であるコンスタンツ公会議の開始(1414年)から,今年は600年目にあたります.三人の法王が存在するという異例の状況を打開するため開催されたこの公会議によって一人の法王が決定され,教会の分裂も一時的に回避されることになりました.しかし,その後のヨーロッパのにおける歴史的な影響は,それだけに止まったわけではありません.公会議の開催中にコンスタンツを訪れた初期の宗教改革者の一人ヤン・フスや,彼の逮捕後に急遽同地へ赴いた,彼の協力者ヒエロニムス・フォン・プラーグに代表されるように,この会議の開催中,当時のヨーロッパ中の知識人たちがコンスタンツに集結し,教会やキリスト教について活発な議論を展開したのです.そして,この動きがその後の人文主義や宗教改革運動の発展および拡大へと繋がって行くわけですが,その意味でコンスタンツ公会議は,ヨーロッパ近代の精神文化の開花のきっかけとなったと言ってもよいでしょう.*1)
簡単に比較することはできませんが,日本にも南北朝時代や戊辰戦争時のように天皇が二人存在していた時代がありました.(後者については,否定する見解もありますが.) しかし,いずれの場合も武力による勝利が終止符を打つ形となり,コンスタンツ公会議のような,やがては啓蒙主義運動,さらにその思想を背景としたフランス革命,そして人権宣言といったヨーロッパが経験した近代への過程の発端となり得る事件は起こりませんでした.このことが示すように,結局,私たち日本人は,いつまで経っても武家による封建統治のようなもの以外想像できないようです.あるいは,強者に対する甘えの構造から抜け出すことができないと言ってもよいでしょう.
ところで,フスが火刑に処せられる際に述べたと言われる次の言葉ですが,一般に白鳥は後に活躍するルターについての予言だったと解されています.*2)
「今日,あなた方は一羽の鵞鳥(自らのこと)を焼き殺すが,やがて,その灰の中から一羽の白鳥が現れるだろう.」
(どことなく,ポーランドの詩人チプリアン・ノルヴィド(Cyprian Kamil Norwid)の『灰とダイヤモンド』(Popiół i diament)という詩を思い出させる言葉でもあります.)
なお,本展における展示品の解説はすべてドイツ語のみですが,英語のオーディオガイドが用意されており,また,ガイドによる英語の解説を聴きながらのグループ観覧も可能です.詳しくは,公式サイト(英語)をご覧ください.
*1) Metzger, F., Wie Konstanz den Humanismus beeinflusste in G/Geschichte, 4/2014, pp62ff; グリーンブラット., S. 著, 河野純治訳, 『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』, 東京,柏書房, 2012参照.
*2) Scholz, S., Eine Frage des Glaubens in ibid., pp43ff
簡単に比較することはできませんが,日本にも南北朝時代や戊辰戦争時のように天皇が二人存在していた時代がありました.(後者については,否定する見解もありますが.) しかし,いずれの場合も武力による勝利が終止符を打つ形となり,コンスタンツ公会議のような,やがては啓蒙主義運動,さらにその思想を背景としたフランス革命,そして人権宣言といったヨーロッパが経験した近代への過程の発端となり得る事件は起こりませんでした.このことが示すように,結局,私たち日本人は,いつまで経っても武家による封建統治のようなもの以外想像できないようです.あるいは,強者に対する甘えの構造から抜け出すことができないと言ってもよいでしょう.
ところで,フスが火刑に処せられる際に述べたと言われる次の言葉ですが,一般に白鳥は後に活躍するルターについての予言だったと解されています.*2)
「今日,あなた方は一羽の鵞鳥(自らのこと)を焼き殺すが,やがて,その灰の中から一羽の白鳥が現れるだろう.」
(どことなく,ポーランドの詩人チプリアン・ノルヴィド(Cyprian Kamil Norwid)の『灰とダイヤモンド』(Popiół i diament)という詩を思い出させる言葉でもあります.)
なお,本展における展示品の解説はすべてドイツ語のみですが,英語のオーディオガイドが用意されており,また,ガイドによる英語の解説を聴きながらのグループ観覧も可能です.詳しくは,公式サイト(英語)をご覧ください.
ボーデン湖畔のコンスタンツ.至る所に「公会議展」のポスターが貼られています. |
*1) Metzger, F., Wie Konstanz den Humanismus beeinflusste in G/Geschichte, 4/2014, pp62ff; グリーンブラット., S. 著, 河野純治訳, 『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』, 東京,柏書房, 2012参照.
*2) Scholz, S., Eine Frage des Glaubens in ibid., pp43ff
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