欧州連合人権条約第10条第1項は,表現の自由について以下のように定めています.
フランスの国内法でも以下の2つの範疇において表現の自由への制限が存在しています.
現在のフランスにおいて表現の自由を規定している法律は,1881年7月29日に制定された報道の自由に関する法律です.
その中の第1条には,« L'imprimerie et la librairie sont libres »とあり,印刷物についても出版物についても自由が保証されています.何を印刷しようと,いかなる本を出版しようと自由というわけです.しかし,ここにも例外,つまり制限が設けられていて,中傷,讒言は許されていません.こうした事を行った場合は,同法の第23条,第24条によると,公共の場や集会に於いて同様の事を演説したり,あるいは叫んだり,さらにそれらを用いて脅迫するなどをした場合と同じ処罰の対象になります.以下は,処罰の対象となる言述のリストです.(面倒なので訳しませんが,ほとんど単語を並べているだけなので,フランス語に馴染みが無くても翻訳ツールで日本語に訳せば意味はお判りになると思います.)
以上,Le Mondeの « Charlie », Dieudonné… : quelles limites à la liberté d'expression ?からでした.(内容の抄訳)
アメリカの憲法で表現と信仰の自由を規定しているのは1791年に加えられたFIRST AMENDMENT RELIGION AND EXPRESSIONで,条文のみ抜き出せば以下の文言のみです.(詳しくは,コーネル大学のこちらのページをご参照ください.)
日本もフランスに比べ,表現に対しては相当の自由が与えられていると思われますが,敗戦後の憲法作成過程において指導したのがアメリカだったことが根本的な理由でしょう.
先日,あるラジオ局のニュース番組の中で出演者の方が,フランスは《表現の自由》を謳っていながら,反ユダヤ的な発言をすると処罰されるというのはダブルスタンダードだと言っていましたが,《表現の自由》という言葉を聞いたその方の頭の中にはアメリカの憲法の文言が思い浮かんだようです.いずれにせよ,プラトンのイデア論を信奉しているのであれば話は別ですが,そうでなければ,絶対的,普遍的,そして固定的な意味(signfié)というものは存在しません.法律の内容を規定するのはあくまでも人間です.そのために,民主主義国家では議会が存在しているわけです.とはいえ,法律の適用範囲の判断がむずかしいことも事実です.
なお,Charlie Hebdo社襲撃事件の直後にフランス各地で,テロ行為を擁護する発言をした罪を巡って裁判が開かれましたが,すでに6件において有罪が言い渡されています.これらの判決は,昨年の11月14日に制定されたテロ防止法に基づいていますが,この法律では,テロ行為の擁護も刑事罰の対象とされています.(Cf. Le MondeのApologie d'actes terroristes : des condamnations pour l'exemple)
また,イスラムにおいていかなる条件が満たされれば預言者モハメッドの図像表現が認められるのかについては,Le Mondeのこちらの記事をご覧下さい.
Everyone has the right to freedom of expression. This rightしかしながら,同条第2項には,
shall include freedom to hold opinions and to receive and impart information and ideas without interference by public authority and regardless of frontiers. [後略]
The exercise of these freedoms, since it carries with it duties and responsibilities, may be subject to such formalities, conditions, restrictions or penalties as are prescribed by law and are necessary in a democratic society, in the interests of national security, territorial integrity or public safety, for the prevention of disorder or crime, for the protection of health or morals, for the protection of the reputation or rights of others, for preventing the disclosure of information received in confidence, or for maintaining the authority and impartiality of the judiciary.とあります.
フランスの国内法でも以下の2つの範疇において表現の自由への制限が存在しています.
- la diffamation et l'injure(名誉毀損,中傷)
- les propos appelant à la haine, qui rassemblent notamment l'apologie de crimes contre l'humanité, les propos antisémites, racistes ou homophobes(憎悪を助長する言動,就中,人道に対する罪を擁護する表現,反ユダヤ人的表現,人種差別的表現,性的差別的表現を含むもの)
現在のフランスにおいて表現の自由を規定している法律は,1881年7月29日に制定された報道の自由に関する法律です.
その中の第1条には,« L'imprimerie et la librairie sont libres »とあり,印刷物についても出版物についても自由が保証されています.何を印刷しようと,いかなる本を出版しようと自由というわけです.しかし,ここにも例外,つまり制限が設けられていて,中傷,讒言は許されていません.こうした事を行った場合は,同法の第23条,第24条によると,公共の場や集会に於いて同様の事を演説したり,あるいは叫んだり,さらにそれらを用いて脅迫するなどをした場合と同じ処罰の対象になります.以下は,処罰の対象となる言述のリストです.(面倒なので訳しませんが,ほとんど単語を並べているだけなので,フランス語に馴染みが無くても翻訳ツールで日本語に訳せば意味はお判りになると思います.)
« - les atteintes volontaires à la vie, les atteintes volontaires à l'intégrité de la personne et les agressions sexuelles, définies par le livre II du code pénal ;参考迄に,フランスに比べて法的に定められた自由の範囲が格段に広いのがアメリカです. そのため,フランスでは処罰の対象となる場合も,アメリカにおいてはその対象とはならないことがしばしばあります.
- les vols, les extorsions et les destructions, dégradations et détériorations volontaires dangereuses pour les personnes, définis par le livre III du code pénal ;
- l'un des crimes et délits portant atteinte aux intérêts
fondamentaux de la nation ;
- l'apologie (…) des crimes de guerre, des crimes contre l'humanité ou des crimes et délits de collaboration avec l'ennemi.
- (Le fait d'inciter à des) actes de terrorisme prévus par le titre II du livre IV du code pénal, ou qui en auront fait l'apologie.
- La provocation à la discrimination, la haine ou la violence envers des personnes “en raison de leur origine ou de leur appartenance ou de leur non-appartenance à une ethnie, une nation, une race ou une religion déterminée”, ou encore “leur oritentation sexuelle ou leur handicap” ».
以上,Le Mondeの « Charlie », Dieudonné… : quelles limites à la liberté d'expression ?からでした.(内容の抄訳)
アメリカの憲法で表現と信仰の自由を規定しているのは1791年に加えられたFIRST AMENDMENT RELIGION AND EXPRESSIONで,条文のみ抜き出せば以下の文言のみです.(詳しくは,コーネル大学のこちらのページをご参照ください.)
Congress shall make no law respecting an establishment of religion, or prohibiting the free exercise thereof; or abridging the freedom of speech, or of the press; or the right of the people peaceably to assemble, and to petition the Government for a redress of grievances.
日本もフランスに比べ,表現に対しては相当の自由が与えられていると思われますが,敗戦後の憲法作成過程において指導したのがアメリカだったことが根本的な理由でしょう.
先日,あるラジオ局のニュース番組の中で出演者の方が,フランスは《表現の自由》を謳っていながら,反ユダヤ的な発言をすると処罰されるというのはダブルスタンダードだと言っていましたが,《表現の自由》という言葉を聞いたその方の頭の中にはアメリカの憲法の文言が思い浮かんだようです.いずれにせよ,プラトンのイデア論を信奉しているのであれば話は別ですが,そうでなければ,絶対的,普遍的,そして固定的な意味(signfié)というものは存在しません.法律の内容を規定するのはあくまでも人間です.そのために,民主主義国家では議会が存在しているわけです.とはいえ,法律の適用範囲の判断がむずかしいことも事実です.
なお,Charlie Hebdo社襲撃事件の直後にフランス各地で,テロ行為を擁護する発言をした罪を巡って裁判が開かれましたが,すでに6件において有罪が言い渡されています.これらの判決は,昨年の11月14日に制定されたテロ防止法に基づいていますが,この法律では,テロ行為の擁護も刑事罰の対象とされています.(Cf. Le MondeのApologie d'actes terroristes : des condamnations pour l'exemple)
また,イスラムにおいていかなる条件が満たされれば預言者モハメッドの図像表現が認められるのかについては,Le Mondeのこちらの記事をご覧下さい.
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