Friday 2 January 2015

100年前に主人が戦死したときから時間が止まっている部屋

ベルギーでの戦闘中に負傷したフランス軍士官ロベール・ロシュローは,英国軍の野戦病院で手当を受けましたが,1918年4月26日,帰らぬ人となりました.享年21歳.彼の部屋は,今でも当時のままの状態で残されています.彼の両親は,息子の死の十数年後に家を売ることにしましたが,そのときに新しい持ち主に示した「息子が暮らしていた部屋をその状態のまま,500年の間,保存すること」という条件は,今に至る迄,忘れ去られることはなかったのです.SPIEGELのギャラリーへはこちらから.

以下,この写真を見た感想です.日本人が培って来た美的感覚は.日本画の構図の美しさに象徴されるように消去や省略によって生み出されるものだと思っています.同様のことは,能や狂言の舞台についても,さらに俳句などの文芸についても言えます.そうした日本の美的感覚と好対照を見せるのが西洋の美的感覚です.それを,とりわけ強く感じさせるのは映画やドラマのセットです.溝口健二の作品を初め,小津安二郎などの作品における室内のセットと英国のグラナダテレビが制作したシャーロック・ホームズシリーズ,同じくITVの名探偵ポワロシリーズにおけるそれらを見比べると,その差が歴然とします.前者ではスケールはともかく,さっぱりしているのに比べ,後者,特にシャーロック・ホームズシリーズでは,歴史を感じさせる多くの品物が置かれています.ポワロシリーズで事件の舞台となる城館などの室内も同様です.こうした違いが,ことによると日本人が良い意味でも悪い意味でも過去に執着しないことを,そして,西洋人が同様に逆の傾向を持っていることに関係があるのではないか,ふとそんなことを考えさせられたのでした.

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