Thursday, 9 August 2018

自らが招いた核災害の記憶を消し去ろうとしたために批判を浴びる東京電力


.....福島第一原発の立地場所が,四十年以上前は海抜三十五メートルの台地だったことが,建設当時に東京電力が国に提出した資料などで分かった.東電は,地盤の強度や原子炉を冷やす海水の取り入れやすさを考慮した結果,地表から二十五メートルを削って原発を建設した.

[...]

福島第一原発が採用したGE設計の〈マークI〉型原子炉は,冷却水を高い位置にまで引き揚げることを想定していない.敷地を低くしたのは,〈マークI〉の仕様に合わせたためだった.

さらに,非常用電源のディーゼル発電機を,海側のタービン建屋の地下に設置することも,GEの設計図どおりに施工された.GEの〈マークI〉は,基本的に地震や津波への対策を重視していない.むしろハリケーンなどへの対策として,非常用電源は破壊されにくい地下に置く設計にしていたのである.
( 高世 仁 (著), 吉田 和史 (著), 熊谷 航 (著) 『神社は警告する─古代から伝わる津波のメッセージ』, 講談社,東京,2012年, pp185ff)
国土地理院の東日本大震災津波浸水概況図より.赤枠で囲んであるのが福島第一原子力発電所の位置.浸水範囲の形状から,人工的に掘削してグランドレベルを下げたことが判ります.
下は,発電所敷地の浸水範囲を拡大したもの.(ANNのニュースより.なお,発電所に押し寄せる津波の映像は,FNNのアーカイブスでも公開されています.)


緑の斜線が非常用発電機ルーム,水色の縦線がバッテリールームを示しています.いずれも,現場作業員たちが10円盤(10m盤)と称し,それを超える津波は来ることはないだろうと思っていた海抜10mより下に位置しており,津波に襲ってくださいと言わんばかりの構造だったのです.Union of Concerned Scientistsのスライド"Are We Safer Now? The Future of Nuclear Power in the Northwest 3.5 Years After Fukushima"より.なお,非常用電源系統が置かれていた部屋が津波により浸水する状況は,門田隆将さんの『死の淵と見た男 吉田昌郎と福島第一原発』(東京,角川文庫,2016年)に詳しく述べられています.とはいえ,今では東京電力自身が2008年に10mを超える津波が押し寄せる可能性に気づいていたことは広く知られているところです.(2011年8月24日付日本経済新聞電子版『福島第1原発、10メートル超の津波想定 東電が08年試算震災4日前に保安院へ報告』参照)

震災発生後,ニューヨークタイムズはマークI型炉の冷却系統の構造上の欠陥があることが以前から専門家によって指摘されていたと言う記事を掲載しました.
他にも...





1991年にアメリカのNRCが発表したGEのマークIおよびII型原子炉の地震時の非常用電源の脆弱性についての報告書へのリンクはこちらです.なお,Wikipediaにあるように,この事実を知っていたのにも拘わらず東京電力は何の対策も講じませんでした.そして,同じタイプの原子炉で稼働中のものは,日本では女川原発(マークIおよび同改良型),東通原発(マークI改良型),浜岡原発(同),滋賀原発(同), 島根原発(同)などです.(福島第一と同程度の津波を受けながら,同じくマークI型原子炉を擁する女川原発が助かった理由は,こちらに詳しく述べられています.一言で言うと,東北電力の担当者は貞観以降の地震が引き起こした津波について調査し,10mを超える津波を想定して施設の建物を高台に建てたことと外部交流電源の一系統が活きていたことです.)
女川原発の津波浸水範囲.上掲の福島第一と比較して,原発の建屋は被害を免れたことが判ります.
最後に,個人的所感ですが,日本人の行動にはしばしば目的合理性を欠くものが見られます.目的があったとしても,殆どの場合,特定の個人や集団の金銭的利益のみであることが多いし,また,合理性も第二次世界大戦末期の戦闘機などを用いた自爆攻撃のように,敵艦を攻撃するという正しい目的があった場合でも,それに到達するための手段は極めて非合理である場合も少なくありません.福島の核災害を振り返るとき,極めて疑わしく思うのは,政府や東京電力が当該の原子炉を導入した目的は,本当に日本と言う自然災害大国において安全に電気を供給するということだったのかということです.そして,仮にもし,それが目的だったとしても,マークI型沸騰水型原子炉を導入することは合理的な選択だったのかということです.

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