Thursday, 4 January 2018

アメリカ人の選民思想の寓意 - 映画『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』

もちろん,この映画を観ていて,かつての『戦場に架ける橋』,『大脱走』,『プラトゥーン』などを思い出す人も少なくないことでしょう.しかし,不思議なほどプロットの構造がアメリカ人特有の選民思想に基づいていることは,すでにこの映画を観たかなり多くのアメリカ人は気づいているはずです.以下は,気づいた範囲での映画に現れる表象とその意味である事象です.(文中の1)は,聖書に記録されている歴史的出来事,2)は,それらに相似していると考えられている宗教改革時代以降の出来事です.)
  • ウィルスに侵され,言語能力と知性を失いつつある,そして滅びつつある人類 = 1) キリストをメシアとして受け入れず,殺害してしまったユダヤ人;2) 堕落したカトリック教会およびその同類(『黙示録』の語彙として『バビロン』)
  • 猿たち = 1) キリストをメシアとして受け入れた異邦人;2) プロテスタント, Pilgrim Fathers
  • シーザー = 1) モーセ;2) ヤン・フスなど
  • 猿たちの強制収容所 = 1) イスラエル人たちのエジプトにおける40年間に及ぶ奴隷生活
  • 新しい土地への行程 = 1) 脱出したエジプトから紅海を渡りカナンの地へ入るまでの行程;2) 新大陸アメリカにたどり着いたプロテスタントたちの東部から西部への移動 (Cf. "Manifest Destiny")
  • 森("woods") = 2) (ペン)シルバニア
ところで,なぜコルネリウスの父であるチンパンジーの名前がシーザーなのでしょう.それは,おそらく,あちこちへ散在している猿たちを集めてひとつの大きな国家を作ることが示唆されているからではないかと思います.あるいは,非ユダヤ人で最初のクリスチャンとされるローマ軍の将校コルネリウスが駐屯していたのがカイサリアだったことに由来するのかもしれません.(Cf. 新約聖書『使徒行伝』第10章)

この作品の制作者(あるいは監督や脚本家たち)の優れている点は,同じ題名の先行作品によって描かれたものの前に起きていた出来事を上記のプロットに沿って描いたことではないでしょうか.こう考えてくると,この映画をさらに楽しむために『十戒』を観るというのも悪い思い付きではなさそうです.

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